書誌情報

発行 2020年12月

ページ数 全78ページ

企画・進行・編集・校閲

Don't Gild the Lily代表
鞆谷六花(@_102202

編集補・組版

東京大学百合愛好会
蓼科らん(@r_tateshina

表紙イラスト・装丁デザイン

よういち(@wowo_oe_aiyiy_

掲載記事紹介

セイジロウ
検証! あの子のまつげは何故長いのか

 百合作品で頻出する表現技法「まつげの長さに気が付く」あのシーンについて、鼻の高さやツヤのある長い髪でもなく何故まつげである必要があるのかという疑問に対して、作中表現の例示を踏まえて考察していったテーマになります。

板奈骨汰
「関係性」の強度、あるいは『少女支配』論

 百合愛好家のみならず、様々な場面で聞くことが増えてきている「関係性」という言葉。これを筒井いつき氏の名作『少女支配』の視点から紐解いていく評論文になります。
 利便性の高い単語の濫用は、その言葉の意味を不在化してしまう。そしてその単語を使うジャンルは陳腐化が進む。百合における「関係性」には何が求められているのだろうか。

しろえ
百合の多様化「百合は精神的な繋がり」

 百合に必要とされているもの、ましては百合を感じることの原点には何があるのかということについて、筆者は「精神的な繋がり」に百合が存在しているのだと結論付けた上で、個々が持つ百合の多様化についても触れたテーマになります。

芦生慧
百合の解体

 元は女性同性愛を指す語であった「百合」という言葉は、今日では性愛のみに留まらない女性間の幅広い関係性を指す言葉として用いられている。その定義は個々人によって大なり小なりの差異があり、しばしば論争の火種にもなっている。
 本稿はそんな百合文化の現在を「百合の解体」という視点から論じる。

鞆谷六花
百合という二文字で表現できない時代がもうすぐそこまできてる

 主催である私が拙いながらも書いたエッセイになります。百合作品はあくまでもファンタジーでありフィクションな世界を描いていますが、現実の世界には同性愛が実際に存在しています。
 フィクションな世界と現実世界の垣根を壊す必要は無いが、この両者の橋渡しをしている百合が担う役割と責任について考えてみました。

平家八草
百合は物語のみにあらず。可愛い、面白い、声がいいから始まる百合

 百合に限らず、我々はコンテンツの真髄は物語だと考えがちです。勿論ストーリーや構成は大いにときめきや滾りを引き起こすけれども、人々を惹きつけるものはそれだけではありません。
 可愛くて声が良いので百合曲が一気に増えた巡音ルカ、ゲームとしての面白さが無数の百合二次創作にも繋がっている東方永夜抄やsplatoonなどの事例を出し、物語以外にも百合を生み出す「引力」はあるのだとこの論考で示した、つもりです。

ゆりすこ
2010年代の百合を振り返る ―そして2020年代へ―

 ゆるゆりの大ヒット、日常系作品の隆盛、コミック百合姫の月刊化、やが君連載開始と終了――
 百合にとって激動の時代となった2010年代。この2010年代を振り返り、これからの百合がどうなっていくのか…… 今後の課題と未来への展望を綴ったテーマになります。

ずいちゃん
おかっぱ頭とロングヘア
――森永みるく『GIRL FRIENDS』における「特別」と性愛

 わたしが「百合」なる言葉を知ったのは、森永みるく作品と出会う直前のできごとでした。
 『GIRL FRIEND』(2008–2010、双葉社)を手に取って以来、長い付き合いになる「百合」そして森永作品を、「性愛」と「成長」というふたつの観点から振り返ってみたいと思います。

益岡和朗
テレビアニメ「ゲゲゲの鬼太郎」第六期におけるシスターフッド
ねこ娘、犬山まな、砂かけ婆の造形を手掛かりに

 テレビアニメ化50周年記念作として放送された第六期「ゲゲゲの鬼太郎」は、シリーズ史上、最も女性が活躍したシリーズであると思います。
 本稿は、そんな第六期を、斬新なキャラクターデザインが話題となった「ねこ娘」と、オリジナルキャラクターである人間の少女「犬山まな」とのシスターフッドの物語として捉え直しました。伝統あるアニメシリーズを舞台とした「見出す百合」の試みを、お愉しみ頂ければ幸いです。


時代とともに変化する百合のスタンダード

 筆者がTwitter上で行った回答件数478件のアンケート結果をもとに、主に百合好きの「層」について検証しています。百合好きな方の性別比、好きな百合ジャンル別の性別比、そして当事者の割合など…。
 今までソースが無い中で当然のように使われてきた『百合好きな女性の方は当事者が大部分を占めていて、男性はそうではない』や『男女比は半々である』などの言葉の根拠が、ここに提示されています。一読する価値は非常に高いと言えます。

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